ここにオブラートはない
written by summer鳥子
2017.08.16 Wednesday

決定的に合わないなという本を読んだ直後だったので、話のテンポや雰囲気のすべてがしっくりと嵌まるかんじにほっとしました。生活を維持するためだけに生活をしている自己矛盾というか、いったい毎日なんなんだろうなという漠然とした不安というか、そういうのものが淡々と柔らかに語られるだけの表題作と、社内でパワハラを受けるOLを描いた『十二月の窓辺』の二編。どちらも見ようによっては明確な救いのない不安がずっと胸の底で燻り続けるような苦い話なんですが、それでも読後、すこし気持ちが楽になる暖かさがあります。家庭環境や図鑑、寺院巡りなど、先日読んだ著者のエッセイの話題と共通している描写が多いので、半分くらい私小説なのかなあとも。

社会や周囲を取り巻く環境、いろいろなものに対する著者の距離感やスタンスがぎらぎらしていないので、読み心地がとてもいいです。つかず離れず、ああ、そうなんだよなあ、と一緒にぼんやり考えながら読み進められる距離感。読んでいて、とにかく落ち着く。

まあとりあえず、明日も働くかあと思える一冊でした。推し作家です。







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