一定期間更新がないため広告を表示しています
一定期間更新がないため広告を表示しています
映画『二十二年目の告白』で、松本まりか嬢が演じていた女性編集者をメインに据えたノベライズ。
映画では気づけば登場しなくなり事件後の姿も描かれない編集者ですが、ノベライズ版では彼女の視点から殺人犯の告白本を出版する葛藤と後悔、抗いがたい殺人犯曽根崎の魅力、彼女自身の本への深い愛情が語られます。メインストーリーに大きな変更はなく映画の脚本に忠実な流れですが、この編集者の持つ本への深い愛情というのがミソで、「時効を迎えた殺人犯が手記を出版する」というショッキングな物語にまた違った側面を与えています。「本」という軸が加わったことで新しい物語が生まれ、映画を観終わった後とは違う余韻が残る読後感です。
息つく間もなく矢継ぎ早に展開していく映画とは違い、映画ではスポットの当たらなかった殺人犯に狂乱する社会への戸惑いが描かれているのも全体の印象の差として現れます。社会の渦というのは、渦中にいる人間のほうが冷静に見つめているものなのかもしれません。それはいくらなんでもないだろうと映画を観ていてムカムカしていた部分に編集者が疑問を投げかけているので、ようやく溜飲が下がるような思いがしました。なんでそんな本、買うの。その一言。
緊迫感を持ったまま終わった映画とは打って変わりいっそご都合主義的なハッピーエンドで締めくくられますが、新しく加わった「本」という軸を考えれば、希望が残る結末のほうが相応しいのかなと思いました。あれだけ凄惨な描写が続いた映画でこのオチだと違和感が出てしまいそうですが。これに関してはどちらが優れているかではなく、軸に置いたテーマの違いなのかなと思います。
冒頭ピンナップの松本まりか嬢も美しいです。美しすぎて、本文内の「冴えない容姿の30歳」という描写と噛み合わないのだけが唯一の難点です。
映画で描かれなかった部分を補完し、別の側面を見せる。相互作用が活きたいいノベライズでした。映画の興奮冷めやらぬうちに、是非。